韓国ではドラマ俳優と映画俳優は別世界だった? 元韓国芸能通訳が目の当たりにした「見えざる壁」

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韓国ではドラマ俳優と映画俳優は別世界だった? 元韓国芸能通訳が見た韓国芸能界の文化

日本では、人気俳優が作品ごとに映画やテレビを行き来するのは、ごく自然なことですよね。

私も韓国芸能界に関わるまでは、その感覚が当たり前だと思っていました。

ところが、通訳として韓国芸能界で仕事をするようになり、その考えは大きく変わります。

当時の韓国では、映画俳優とドラマ俳優は、私が想像していた以上に”別の世界”の存在でした。明確なルールがあったわけではありませんが、業界には両者を自然と住み分ける空気があったのです。

今回は、私が現場で実際に体験し感じたエピソードも交えながら、韓国芸能界にあった「俳優の見えざる壁」について綴ってみたいと思います。

目次

韓国ではドラマ俳優と映画俳優は、まるで別の世界だった

私が韓国芸能界で仕事をしていた頃は、今とはまったく違う空気が流れていました。

映画とドラマは、それぞれ別のフィールド。そこで活躍する俳優たちも、”別の世界の人”として受け止められていたように感じます。

求められるものも、キャリアの築き方も、世間から寄せられる期待も違う。だからこそ、映画俳優とドラマ俳優が行き来することは、今よりずっと特別なことでした。

そして、この”住み分け”は映画とドラマだけに限った話ではありません。

韓国では現在でも、毎日放送されるイルイルドラマ(韓国の平日帯ドラマ)と、ミニシリーズや週末ドラマでは出演する俳優の顔ぶれが異なる傾向があります。

日本以上に、作品や放送枠ごとにキャリアのフィールドが意識される文化が根付いているのです。

「神秘性」のチュンムロと、「親しみやすさ」のテレビ

当時の韓国で映画俳優が特別な存在と見られていた背景には、韓国映画界ならではの文化がありました。

韓国映画界の中心地・忠武路(チュンムロ)の名を冠した『チュンムロ俳優』は、高い演技力と作品性を重視する世界でキャリアを築いてきました。

出演作は多くなくても、一作一作で存在感を示す。頻繁にメディアへ露出するよりも、スクリーンで作品と向き合う姿そのものに価値がある──そんな空気が当時の映画界にはありました。

一方で、ドラマ俳優に求められたのは、演技力だけではありません。お茶の間に親しまれる存在であり、時代のトレンドを映すスターとしての役割も担っていました。

制作現場の環境も対照的です。

当時の韓国ドラマは、放送直前まで撮影が続く「生放送さながら」のスケジュールが珍しくなく、短時間で膨大な台詞を覚え、その場で演じ切る瞬発力が求められました。ソウルの街を深夜にドライブすると、あちらこちらで撮影のセットが組まれていたりしたものです。

一方の映画は、1つのシーンに時間をかけ、監督と議論を重ねながら人物像を丁寧に作り上げていくスタイル。制作期間も長く、作品ごとにじっくり役と向き合える環境でした。

こうした制作スタイルの違いは、俳優に求められる資質やキャリアの築き方にも大きな影響を与えていたように思います。

映画は1〜2年に1本の出演でも評価を積み重ねられる世界でしたが、ドラマ俳優は毎年のように新作へ出演し、視聴者の記憶に残り続けることも重要でした。

日本との決定的な違い

日本では、映画とドラマの垣根はほぼありませんよね。

人気ドラマが映画化されることも珍しくなく、俳優がテレビドラマと映画を自然に行き来する姿も当たり前の光景です。

一方、少し前までの韓国では、映画界とドラマ界はそれぞれ独自の文化で。積極的に混じり合うことは無かったように思います。

そのため、映画を中心に活動する俳優がドラマへ出演することが決まったりすると、ニュースになるほどでした。

日本の感覚で考えるよりも、その一歩には大きな意味があり、業界内でも注目される出来事だったように思います。

配信時代が変えた「映画俳優」と「ドラマ俳優」の境界線

この”見えざる壁”が少しずつ変わり始めたのが、Netflixをはじめとする配信サービス(OTT)の登場です。

映画を主戦場としてきた俳優が次々とドラマへ出演し、『映画俳優』『ドラマ俳優』という境界は急速に薄れていきました。

世界配信を前提としたドラマには、これまでのテレビドラマとは比べものにならないほどの制作費が投じられるようになりました。撮影スケジュールにも以前よりは余裕が生まれ、映像表現や演出も、映画に近いスケールへと進化していきます。

その変化とともに、映画を主戦場としてきた俳優がドラマへ出演することも、珍しいことではなくなりました。

今は、映画かドラマかという”媒体”よりも、「どんな作品に出演するか」が重視される時代です。

一昔前の韓国芸能界を知る人ほど、この変化の大きさを実感しているのではないでしょうか。

私が韓国芸能界で感じた”空気”と失敗

私自身、その違いを強く実感した出来事があります。

韓国芸能界で通訳として仕事を始めたばかりの頃、映画俳優のマネージャーさんとの何気ない会話で、

「ドラマには出演されないんですか?」

と尋ねたことがありました。

その瞬間、場の空気が少し変わったのを今でもよく覚えています。

もちろん、怒られたわけではありません。

ただ、「うちの俳優をドラマに?」とちょっと怪訝な表情で言われたので、一気に縮こまってしまった苦い思い出です。

無知は罪というか、大切な仕事仲間の機嫌を危うく損ねるところでした。

でも、その小さな出来事が、韓国芸能界ならではの文化を理解するきっかけになりました。

ドラマ俳優と映画俳優まとめ

今回ご紹介したのは、私が韓国芸能界で仕事をしていた当時に感じた空気と、その背景にあった業界の文化です。現在では制作環境も俳優のキャリアも大きく変化し、当時とは異なる部分も少なくありません。

韓国ドラマや韓国映画を見ていて、「なぜこの俳優のドラマ出演が当時これほど話題になったのだろう?」と思ったとき、この記事を思い出していただけたらうれしいです。

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